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Misty Song ~もう歌しか聞こえない〜 final

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桜並木の道を私は覚えている。
此処から始まった。此処で終わった。
繰り返すごとに擦り切れる心。
演じていれば楽になれると思い始めたのは何時頃からだろう?
道の先にある切り株の上をステージに見立ててよく歌っていた。
懐かしき場所。二度と来ないと思っていた場所。



とうとうこの日が来た。
背中から嫌な汗がダラダラと流れる鬱陶しさに苛立ちを覚えていた。

「あいつが…来る」

私は今、酷い幻覚痛に襲われている。
何度も何度も四肢が健在かを確かめてしまうのは決して臆病だからではない。その時、目の前の空間がスッと歪んだ後、空っぽの闇が蠢いた。

「はろ~、幽々子より先に着いちゃうなんてね」

"八雲紫"何処か楽しげな声で空にハラハラと舞う桜の花びらを見上げていた。

「…」

「あら?だんまりなんてあんまりだわ~」

「…で?何が目的なの?」

「そんな怖い顔しないで、私はただ貴方の歌が聴きたいだけなのだから」

「歌?」

「そう、貴方が好きだった歌。誰しもに愛された歌を聴かせて欲しいの」

「な、なにそれ…私の歌を誰も聴いてくれないのに愛されてるとか意味わかんな…」

「Misty Song」

「!?…どうしてその歌の名を知っているの?」

「ふふ、さぁてどうしてかしらね? あら、お目当ての人が来たわよ」

その言葉に全身の毛が逆立ってゆく。
畏怖?いや、もっと違う別の何かが足元から這い寄ってくる。
こういう感覚は慣れないし、慣れたくもない。願い下げだ。

「ふぅ、此処に来たのは久しぶりだわ」

幽々子はゆっくりとした口調で私を見る。
目と目が合う。逸らせるものなら逸らしたい。
捕食する者、される者の関係に抗うことは出来ない。
ギリギリと歯軋りをしながら幽々子を睨みつける。

「今日はお腹がいっぱいだから。貴方を食べることはないわよ~」

幽々子は少し苦笑いしながら私にそう言った。
そんな言葉で油断を誘っているのか?
分からない。ただ、この状況は今までとは少し違う。
何がどうなっているのか?私は少しずつ混乱し始めていた。

「あんた達…一体どういう…」

「すみません。遅れました」

私の言葉を遮ってゆらゆらと舞っていた桜が突風に激しく舞い踊る。
その中にいたのは「魂魄妖夢」だった。
鋭い眼光に少し身を強張らせる。

「妖夢、見つかった?」

「はい、幽々子様。少々手間取りましたが大丈夫です」

「ならよかった。それじゃあ、始めましょうか」

そう言って幽々子は私を再度見た。
視界には妖夢も映っている。その手に何か持っていた。
何となくそれに近づくなと本能が告げる。

「黒い刀…」

「そう見えるだけです。走馬刀とでも名付けておきましょうか。
 貴方は今から私に切られて下さい。少し痛いと感じるだけですので安心して下さい」

「いやいやいや、そんなんで切られたら死ぬよ私」

「物は試しです。遠慮なんてなさらずに」

そう言ってズズいっとこちらににじり寄ってくる妖夢。
ゴクリと唾を飲み込んだ瞬間、目の前から消え、そして…

「刹那の煌きと共に古の記憶を奏でよ…はぁ!」

【ザシュ!】

「ぐ、ぁ、が?」

変な声が出た。
一瞬だけ鋭い痛みが身体中を稲妻のように駆け巡った。
そして頭の中を沢山の想いが過去の記憶を紡いでゆく。

螺旋に落ちてゆくような微睡みの中で、弱々しい光を見つけた。
「私の存在意義の欠片」をそこに見つけた。
誰かに聴いてもらう喜びを見つけた。誰しもが耳を塞ぐ悲しみを見つけた。
どうしようもない泥沼に嵌っているかのような足取りで、
私は止まることを止めない。否、止まることなど初めから忘れていたのだ。

「もう一度、あの歌が聴きたい」

沢山の想いが私を支配していた。
温かくて涙が止まらない。

「あの歌を、ミスティア・ローレライのMisty Songを」

その言葉に衝撃が走る。
私を…私の名前を知ってくれていた。みんな、分かってくれていたんだ。
なのに、なのに私は勘違いして一人で突っ走って歌を穢してしまった。
どうしよう、どうしてしまおうか。私は、取り返しのつかない場所にいるのだ。
悲しみの旋律が全身を包み込む感覚に身を任せてしまいそうになる。

「貴方は、もう一度歌を歌わなければいけない」

凛とした声が私の耳に届いた。
ハッとして目を開けて一番に飛び込んできた景色は、西行寺幽々子の儚げな笑顔だった。
不思議だ。畏怖という概念の塊だったはずの対象。
あいつの桜の仄かな香りに縋りたくなるような衝動に駆られてしまう。
記憶が混濁している。あいつ…畏怖の対象でない幽々子を過去の私は知っている。

「幽々子?」

私の口から出た言葉に幽々子は目を丸くする。
そして、満開の「喜」の表情に変わった。

「思い出せた?」

「よく分からない。だけど、どうして歌を歌えなくなったのか分かった気がする」

私は身体を起こして切り株の上に立つ。
今なら歌える気がした。沢山の想いが桜と共に渦巻いてゆく。

「~~~~♪」

私の歌が聞こえる。私が今歌っている。
花や木や風が優しく揺れる。人も妖も自然と集まってきた。
皆、待っていた。そう思わせてくれるような光景に涙を流しながら私は歌い続けた。私は全て思い出した。



「幽々子~、異変が終わるわ~」

「そうね」

「あら?何だか味気ない返答ね」

「ふふ、もう一度あの歌を聴けて良かったって感慨に耽っているのかもしれないわね」

「全てを魅了する歌か…一歩間違えると人を狂わせてしまうのね」

「そうね、でも、もう大丈夫だと思うの」

幽々子は、従者の名を呼んだ。
歌に聴き入っていた妖夢が振り返る。
嬉しそうな顔で振り返る。
桜の花びらが空を桃色に染めてゆく。
まるで祝福するかのように。


沢山の想いがミスティアに告げた「おかえりなさい」と。
「Misty Song~私の存在意義~」



~終わり~

夢を見ました。
それは良い夢ですか?悪い夢ですか?
私には分かりません。
ただ、長く続く終わりのない繰り返し。
手順だけは分かっている夢の中で、
少しずつ足掻き続けた結果を
Misty Songに書き綴ってみました。

少し急ぎ足の展開になったかもしれませんが、
これにて終幕です。ありがとうございました。

また、別の話を予定していますので、
見ていただけると幸いです。


海兎/柚希

テーマ : 二次創作
ジャンル : 小説・文学

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Author:海兎
ゆったり、まったり海兎/蒼Color

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