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Misty Song ~もう歌しか聞こえない〜 final

Vol.1↓
http://yuzuirosora.blog.fc2.com/blog-entry-104.html

vol.2↓
http://yuzuirosora.blog.fc2.com/blog-entry-124.html

vol.3↓
http://yuzuirosora.blog.fc2.com/blog-entry-125.html

vol.4↓
http://yuzuirosora.blog.fc2.com/blog-entry-127.html

vol.5↓
http://yuzuirosora.blog.fc2.com/blog-entry-177.html

vol.6↓
http://yuzuirosora.blog.fc2.com/blog-entry-199.html



桜並木の道を私は覚えている。
此処から始まった。此処で終わった。
繰り返すごとに擦り切れる心。
演じていれば楽になれると思い始めたのは何時頃からだろう?
道の先にある切り株の上をステージに見立ててよく歌っていた。
懐かしき場所。二度と来ないと思っていた場所。



とうとうこの日が来た。
背中から嫌な汗がダラダラと流れる鬱陶しさに苛立ちを覚えていた。

「あいつが…来る」

私は今、酷い幻覚痛に襲われている。
何度も何度も四肢が健在かを確かめてしまうのは決して臆病だからではない。その時、目の前の空間がスッと歪んだ後、空っぽの闇が蠢いた。

「はろ~、幽々子より先に着いちゃうなんてね」

"八雲紫"何処か楽しげな声で空にハラハラと舞う桜の花びらを見上げていた。

「…」

「あら?だんまりなんてあんまりだわ~」

「…で?何が目的なの?」

「そんな怖い顔しないで、私はただ貴方の歌が聴きたいだけなのだから」

「歌?」

「そう、貴方が好きだった歌。誰しもに愛された歌を聴かせて欲しいの」

「な、なにそれ…私の歌を誰も聴いてくれないのに愛されてるとか意味わかんな…」

「Misty Song」

「!?…どうしてその歌の名を知っているの?」

「ふふ、さぁてどうしてかしらね? あら、お目当ての人が来たわよ」

その言葉に全身の毛が逆立ってゆく。
畏怖?いや、もっと違う別の何かが足元から這い寄ってくる。
こういう感覚は慣れないし、慣れたくもない。願い下げだ。

「ふぅ、此処に来たのは久しぶりだわ」

幽々子はゆっくりとした口調で私を見る。
目と目が合う。逸らせるものなら逸らしたい。
捕食する者、される者の関係に抗うことは出来ない。
ギリギリと歯軋りをしながら幽々子を睨みつける。

「今日はお腹がいっぱいだから。貴方を食べることはないわよ~」

幽々子は少し苦笑いしながら私にそう言った。
そんな言葉で油断を誘っているのか?
分からない。ただ、この状況は今までとは少し違う。
何がどうなっているのか?私は少しずつ混乱し始めていた。

「あんた達…一体どういう…」

「すみません。遅れました」

私の言葉を遮ってゆらゆらと舞っていた桜が突風に激しく舞い踊る。
その中にいたのは「魂魄妖夢」だった。
鋭い眼光に少し身を強張らせる。

「妖夢、見つかった?」

「はい、幽々子様。少々手間取りましたが大丈夫です」

「ならよかった。それじゃあ、始めましょうか」

そう言って幽々子は私を再度見た。
視界には妖夢も映っている。その手に何か持っていた。
何となくそれに近づくなと本能が告げる。

「黒い刀…」

「そう見えるだけです。走馬刀とでも名付けておきましょうか。
 貴方は今から私に切られて下さい。少し痛いと感じるだけですので安心して下さい」

「いやいやいや、そんなんで切られたら死ぬよ私」

「物は試しです。遠慮なんてなさらずに」

そう言ってズズいっとこちらににじり寄ってくる妖夢。
ゴクリと唾を飲み込んだ瞬間、目の前から消え、そして…

「刹那の煌きと共に古の記憶を奏でよ…はぁ!」

【ザシュ!】

「ぐ、ぁ、が?」

変な声が出た。
一瞬だけ鋭い痛みが身体中を稲妻のように駆け巡った。
そして頭の中を沢山の想いが過去の記憶を紡いでゆく。

螺旋に落ちてゆくような微睡みの中で、弱々しい光を見つけた。
「私の存在意義の欠片」をそこに見つけた。
誰かに聴いてもらう喜びを見つけた。誰しもが耳を塞ぐ悲しみを見つけた。
どうしようもない泥沼に嵌っているかのような足取りで、
私は止まることを止めない。否、止まることなど初めから忘れていたのだ。

「もう一度、あの歌が聴きたい」

沢山の想いが私を支配していた。
温かくて涙が止まらない。

「あの歌を、ミスティア・ローレライのMisty Songを」

その言葉に衝撃が走る。
私を…私の名前を知ってくれていた。みんな、分かってくれていたんだ。
なのに、なのに私は勘違いして一人で突っ走って歌を穢してしまった。
どうしよう、どうしてしまおうか。私は、取り返しのつかない場所にいるのだ。
悲しみの旋律が全身を包み込む感覚に身を任せてしまいそうになる。

「貴方は、もう一度歌を歌わなければいけない」

凛とした声が私の耳に届いた。
ハッとして目を開けて一番に飛び込んできた景色は、西行寺幽々子の儚げな笑顔だった。
不思議だ。畏怖という概念の塊だったはずの対象。
あいつの桜の仄かな香りに縋りたくなるような衝動に駆られてしまう。
記憶が混濁している。あいつ…畏怖の対象でない幽々子を過去の私は知っている。

「幽々子?」

私の口から出た言葉に幽々子は目を丸くする。
そして、満開の「喜」の表情に変わった。

「思い出せた?」

「よく分からない。だけど、どうして歌を歌えなくなったのか分かった気がする」

私は身体を起こして切り株の上に立つ。
今なら歌える気がした。沢山の想いが桜と共に渦巻いてゆく。

「~~~~♪」

私の歌が聞こえる。私が今歌っている。
花や木や風が優しく揺れる。人も妖も自然と集まってきた。
皆、待っていた。そう思わせてくれるような光景に涙を流しながら私は歌い続けた。私は全て思い出した。



「幽々子~、異変が終わるわ~」

「そうね」

「あら?何だか味気ない返答ね」

「ふふ、もう一度あの歌を聴けて良かったって感慨に耽っているのかもしれないわね」

「全てを魅了する歌か…一歩間違えると人を狂わせてしまうのね」

「そうね、でも、もう大丈夫だと思うの」

幽々子は、従者の名を呼んだ。
歌に聴き入っていた妖夢が振り返る。
嬉しそうな顔で振り返る。
桜の花びらが空を桃色に染めてゆく。
まるで祝福するかのように。


沢山の想いがミスティアに告げた「おかえりなさい」と。
「Misty Song~私の存在意義~」



~終わり~

夢を見ました。
それは良い夢ですか?悪い夢ですか?
私には分かりません。
ただ、長く続く終わりのない繰り返し。
手順だけは分かっている夢の中で、
少しずつ足掻き続けた結果を
Misty Songに書き綴ってみました。

少し急ぎ足の展開になったかもしれませんが、
これにて終幕です。ありがとうございました。

また、別の話を予定していますので、
見ていただけると幸いです。


海兎/柚希
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テーマ : 二次創作
ジャンル : 小説・文学

SSS:真黒な空と香り纏う月

以前書いた短編のリメイクなります。
「柚」をテーマにした作品です。







夢だと分かっていた。
僕が毎晩見る夢に出てきた女の子。
夢の中はとても静かで星ひとつない冷たい夜空…問いかけは、いつも僕からだった。

「君は誰?」
声はまだ届かない。でも…今日は違った。


いつもは遠くから見ているだけだった。
けれど毎晩の夢を写真を並べるように重ねていくうち、一歩、また一歩近づいて君の目の前まで来た。

淡い金色の髪、笑顔がよく似合う幼顔、黒いワンピースに茶色のブーツ、
背中には天使の白い羽根が描かれていて、今にも飛んでいきそうな雰囲気を纏っている。
歳は14くらいだろうか。僕は意を決して話しかけた。

「君は、誰?」

少し上ずった声になってしまったのは緊張からだと思う。女の子は笑顔のまま答えた。

「わたしの名前は柚希(ゆずき)だよ。
 柚はねぇ、木の事を指していてー、希はねぇ、希望を意味してるんだよぉ」

その子は自分の名前を嬉しそうに少し間延びした拙い言葉遣いで、そう言った。
確か「柚」は「ゆう」と読み、木の事を意味する。
「柚子」となると実の事を指し、その木の子供たちを意味する為、
柚子になったと何かの授業で習った記憶があった。

「ねえ、ねえ?君はなんていうのー?」

記憶を辿っていると、柚希が子犬のような目をして僕に問いかけてきた。

「僕の名前は、黒空(クロラ)。
 この夜空のように何もない空っぽの事を指してるんだ」 

僕は、夢の中にある。
ただ暗闇が広がるだけの夜空を見上げて言った。
この言葉を何回言っただろう。
珍しい名前だから、意味を問われる事も多かったりする。
こう言う度に、その人との間に若干の隙間、
恐怖・不安など無意識にイメージさせてしまうのはそういう血筋らしい。
元々、空っぽの僕にはお似合いだと思う。


「「黒空」変わった名前だね!…空っぽかぁ。
 あはは、私のここんとこと同じだねー」

柚希は自身の胸の真ん中に手を当ててそう言った。
でも、無邪気な顔をしていた柚希が一瞬見せた悲しそうな目。
何故だろう、いつも感じる「隙間」を感じるどころか、「親近感」を覚えてしまった。

「柚子ってねぇ、トゲのある種類があるのぉ、
 近づく人を無意識に傷つけちゃってー、
 気付いたら赤くて綺麗な液体がドクドク周りに流れてて、
 一瞬だけ聞こえる甘い声もしばらくしたら聞こえなくなるのぉ。
 お母さんが「これはゲームだよ」っていつも言ってた。
 私、ゲーム得意なんだよ♪ お母さんはもういないけど、黒空にも見せてあげたいなぁ」

楽しそうに笑う柚希。
実生(野生)の柚子の事を指しているのだろう。
柚子は、野生のままだと、収穫まで、16年の年月がかかる。
育種の短縮化の為、2個以上の植物を人為的に切って切断面を接着して、1つの個体にする。
「接木」という作業を行う事で4年で収穫できるようになりトゲもそんなにない。
そうだとしても、この柚希に関係があるのだろうか?

「君は、柚子ではないだろう?」

「そうね、一応人間ではあるよぉ。
 でも、成長がすごく遅いから今の身体も本来なら、20歳は超えてるはずだもん。
 人は私を恐れるわ。同じように歳を取らないのだからー。
 だから私を殺そうとする人達も多かったんだよねぇ。
 その度に、赤い花が咲いて散っちゃうんだけどねぇ。
 ゲーム。そう全てはゲームだから、主人公はクリアを目指さなきゃいけないの。
 終わらない、終わりのないエンディングを見るためにね」

柚希は軽いステップを踏みながら、僕から距離を取った。

「今日は、ここでおしまい。
 黒夢、空っぽだという事は、新しいものを詰め込めるという意味も含んでいるんだよぉ。
 私には壊すことしかできないけど黒夢には壊してもー、創ることが出来る力があるのぉ。
 だから、私の事はたまに思い出してねぇ。約束だよぉ」

柚希は舞う、真っ黒な夢の空から小さな光が1つ落ちてきた。
「ああ、行かなければ」と頭の中で誰かが言っている。
柚希の事が気になるけれど、僕にはまだやるべき事があるようだ。
そして…何故気になるのかも。

「忘れないよ。君の事。
 またいつか会いたいな。柚希、僕の大事な欠片の1つ」


そう言うと柚希は頬笑み、僕の真っ黒な空へ消えて姿を、
月へと変え、僕を優しく冷たく照らした。


「「またね」」

テーマ : ショート・ストーリー
ジャンル : 小説・文学

【東方SSS】feel your heart 〜2012ver.〜

びびびっ!び・・びび?びびっ!

深夜の永遠亭の庭に、鈴仙・優曇華院・イナバことうどんげはいた。
月に顔を向け、目をうっすらと閉じ月にいる兎達と情報交換をする。
最近は「ねこなべ」ならぬ「うさぎなべ」
というものが流行っていて月の民の1人が、
「うさぎさんとなべ」などという本を出版しベストセラーを続けているらしいのだ。

「うさぎなべ…食べる訳ではないのね
 近頃の月の民は何を考えているのかしら」

呆れながら交信を続けるうどんげ。

「ふむふむ、今回は特に事件はなさそうね。
 ふー!つっかれたー!ようし!寝よう!寝ちゃおう!」

目を開け、月を見ながら伸びを一回、くるっと後ろを向いた…その時。

「わわー!鈴仙どいてー!」

突如、後ろの方からてゐの声がして振り向くうどんげ。

「てゐ?…!?」


(ごーん!)


て「$%&’&$#!?」


後ろを振り向いた瞬間、てゐがこちらに飛んでくるのが見えた。
「すごく焦った顔してるな」なんて思ってたら物凄い衝撃を受ける。
ぶつかった。しかも頭をごっつんこ、これは痛い。


「うきゅうううう」

うどんげは意識を手放した。

「いたた…あれ?私が目の前にいる。
 じゃあ、私は?あ、れ?うどんげ?
 …身体が入れ替わっちゃったぁ!?」

てゐ(身体はうどんげ)は、ちょっと待て落ち着けと
自分に言い聞かせながらとりあえず伸びている
うどんげ(身体はてゐ)をうどんげの部屋まで運ぶ。


「よいっしょっと!あ、私って軽いかも」

てゐ(うどんげ)は、うどんげ(てゐ)を運び終わってからそう言ってみる。

「うーん、朝までに戻ればいいんだけどな」

「すやすや・・うー、うさぎなべはいやー」

「どんな夢見てんだか、まったく」

そう言いながら、てゐ(うどんげ)の頭を撫でる。
あ、結構さらさらな髪なんだなと
うどんげ(てゐ)は、自分の髪なのにそう感じていた。



入れ替わる前、てゐは木の上からうどんげを見ていた。
月を見ていたうどんげ。
やっぱり月が恋しいのかなとか思ったりするのである。

月に照らされたその寂しげな表情は、
そのまま消えてしまいそうな儚さを感じさせていた。

その表情は儚げで何となく何処かに行ってしまいそうで…
気付いたらドジっててゐは、木の枝から足を踏み外していた。

「はぁ、我ながらドジったなぁ。
 うどんげにイタズラしてやろうと思っただけだったのに。ん?」

そう言いながら月を見たときに微かに聞こえた声。

「これは…月の声?」

微弱な電波を感じ取るように、ピリピリする耳。
そして、ノイズ混じりに聞こえる可愛らしい声。

「以前、鈴仙が言ってた月の兎との
 交信ってやつなのかな?ふーん、そっか」

どうやら、月兎達で宴会をするらしい。
楽しそうに話すその声に苛立ちを覚えて月から目線を外してうどんげ(私)を見た。

「すー、すー、うーん、ちぇりもや」


「え?はい?よく意味の分からない単語を口走ったよこの兎。
 …まったく心配だから今日だけ一緒に寝てあげる!勘違いしないでよね!」

なんて一人で言いながら、布団に潜り込むうどんげ(てゐ)。
入れ替わってるから、必然的にがてゐ(うどんげ)がうどんげ(てゐ)を
抱きしめる形になる。

て「すごく変な感じ」

う「うー、てゐが飛んできて…すー。すー」

て「へへ、おやすみ、鈴仙」


夢の中、誰かの記憶を垣間見てる。
私は…走ってる。

はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。

空は真っ暗だけど花火みたいな閃光。
色んなところから悲鳴が聞こえる。
怖くなって、掴んだ誰かの手は…骨?

声にならない
叫び声をあげる寸前。

「…ほら…あ…てゐ?」

急速に意識が浮上して…

「ううん、あー?」

「なに人の布団で寝てるのよ、あんた」

「え?え?」

「だーかーらー…まったく、とにかく朝御飯の支度手伝ってね」

「あ、うん。わかった」

あれ?何時の間に元に戻ったんだろう?
疑問に思いながらも急いで布団を片付けて、てゐはうどんげの元へ向かう。

−夢だと思ったけどおでこに触れた時に、そうじゃなかったんだと確信した—

テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

【東方SS】誰も知らない詩3

物語は遡る。時間の認識に正解ってあるのかな。
例えば、腹時計なんて言葉があるけれど、私と皆は違う。
同じなんていない。コンマ何ミリの誤差。
けれど「同じ」と錯覚してしまう時もある。

それは空間の認識にも言える事。
今歩いてる場所は本当は自分だけが認識しているだけの場所で、
他の人から見たら「崖」「無」「階段」など
認識の相違が見られるのかもしれない。


そんな事を考えている。
ふわふわとしたものに包まれている。
赤子になったような感覚。心地良い。
けれど不安。誰か、誰か来て。
声を発せども「あー」「うー」と自身の中に芽生えている単語を形成する事は皆無。

もどかしい、水の中にいるような錯覚。
私は「水」というものが大嫌い。
吸血鬼だからという理由もあるがそれだけではない。
「雨」を連想させる。冷たい雨。
私を閉じ込める雨。「水」から分岐し、生まれた「雨」

しかし、私は「水」が大嫌いとか言いながら、
あのメイド長が淹れた紅茶が大好き。
お姉さまとお風呂に入るのも大好き。

そう、全ては私のエゴなの。
嫌いと言いながら、何処か矛盾している。
けれどそれを口に出すのは怖い。
エネルギーがいる。

黙考、沈思、浮上、暫しの無音…そして覚醒。




「独りぼっちはもうヤダよ…」

部屋の中、ベッドの上で膝を抱えて
時間を持て余していた私。
物音一つしない空間。
まるで世界から切り取られたようで、
寂しいという感情が時間をかけて心の表面上に蓄積されていく。

「眠っているのかしら?」

不意に頭上からする声。愛しい声。
私はバッと身を起こして声の方を見た。

「…誰も…いない?」

声は小さく部屋の中で反響して、それと反比例して先の感情は強くなる。
それは自分を保てないレベルまで達しそうなくらいで。

「此処にいるわ」

ふわり、背中越しに伝わる温もり。
大好きな甘い匂いがして、それだけで
先程の感情が嘘のように消えていく。

「お姉ちゃん、お帰りなさい!」

そして、振り向く。認識。確認。そして涙。

「ただいま。どうしたの?怖い夢でも見たのかしら?」

お姉ちゃんだ。
ちゃんと私を包みこんでくれている。
沢山の言葉が浮かんで、喧嘩して、我先にと競い合って発せられた言葉。

「うー」

先程の夢の中にいたような感覚。
単語を形成出来ずにいる私。
戸惑いながらお姉ちゃんを上目遣いで恐る恐る見た。

「大丈夫。何も怖くない。ほら」

お姉ちゃんはそう言いながら自身の胸に私の頭を導く。
優しく抱かれながら、お姉ちゃんの鼓動。
優しくて、力強くて、段々と気持ちが落ち着いてくる。

「お姉ちゃん、何処に行ってたの?
 私、探したんだよ?でも、此処で待つ約束を破ってごめんなさい」

「いいの。私がすぐにフランの元へ戻らなかったのが悪いのだから。
 フラン、貴方は此処にいる。約束を破ってなんかないわ」

そう言って私の頭を撫でてくれた。
何もかもどうでもよくなってくる。

「フラン、貴方は"あの"外の景色を見たのかしら?」

一定間隔で私の頭を撫で続ける手を止めずにお姉ちゃんは問う。

「うん…あれは、何?」

「難しい話になるのだけど、簡単に言うわ。
 貴方が元いた世界は滅びたの」

「え!?滅び…た?なんで?どうして?えと…」

少し呼吸が浅くなる。少し鼓動が早くなる。
そして疑問が渦巻く螺旋階段の中に私はいる。
上っているのか、下っているのかさえ曖昧な心。


「長くなるけれど、聞いて。
 私はあの世界が長くないことを知っていた。
 運命がそちらへ収束していくのは遅かれ早かれ分かっていた事なのだけど、
 時は無常にもその日を告げた。
 私…私は貴方を置いて外に出て、パチェに魔法をかけてもらった。
 時間と空間と世界と切り離す魔法を。
 幸い、貴方の部屋の丸ごと切り離すぐらいの効果はあったみたいね。
 そして、貴方は眠った。
 その後、私達は普段通り過ごしたわ。
 世界が終わるのを知っている者は極僅かだったけど、みんなあの世界が大好きだった。
 だから足掻く必要もなかったの。ただ、受け入れるだけ。
 けれど、私は私のエゴで貴方を助けたかった。
 私は私の力でそれを垣間見た。
 そして、此処に来る前に貴方が部屋を一度出るように仕向けたのは、
 きっと元の世界にいた私のエゴだったのかもね」

そう言って少しの沈黙。私は問う。

「エゴ?助けたかった?受け入れる?」

沢山、沢山、解らなくて、でも聞きたくて。
お姉ちゃんの瞳が「哀色」を示した。
そして紡がれる。それは詩のように滑らかな発音。
誰も、誰も知らない。ううん、私達だけの詩。
私達だけしか知らない詩。

「地球は動くのを止めた。自転が止まったともいうわね。
 その後、どうなるか?
 慣性の法則…はフランには難しいわね。
 簡単に言うと、地球が急に止まる。けれど私達には予期せぬ事で急には止まれない。
 私達は今話してる状態であるけど、動きつづけている。少しづつ。
 動いてるものは動き続けようという力が働くの。 
 だから、地球が急に止まってしまったら私達は、当然吹き飛ばされる。
 物凄い力で。何もかも。抗うことは出来ない。
 貴方が見た風景はそのせいなの。
 そして今、貴方がいるこの世界は、貴方が元いた世界ではない世界なの。 
 世界は分岐を繰り返し、やがて収束し、生死を繰り返し、また分岐していく、
 死んだ世界が元いた世界。未だ生きている世界がこの世界になるわ。もしかしたら次の瞬間には、
 この世界もなくなっているかもしれないけど、それは私達の気づかないうちに行われている。
 時間と空間の認識に鈍感なの。私達って」

お姉ちゃんは言い終えるとふわりと私に微笑んだ。

「でも、そうだとしたらこの世界の私はどうなるの?消えちゃうの?…けほけほ」

頭の中に「独りぼっち」という単語が連鎖する。
消えずに積み上がる。胸が苦しくなる。
嗚咽が止まらない。

「消えないわ。貴方は貴方を受け入れた。
 そして生き続ける。
 沢山の貴方を抱えて、その記憶は色褪せずに刻み込まれるの。
 フランは、フランなのよ。此処にいる。私の可愛い妹よ」

少し強く抱き締められる。
消えない。此処にいる。
どうして私は自分自身を認識出来ないのだろう。
存在を曖昧に自分自身でしてしまうのだろう。
他者に存在を確認してもらっても、それは制限時間を過ぎれば、また再確認をしなければいけない。
雲のように掴めない。繰り返す。
そして、私は私として形成されていく。
私は私として認識されていく。

お姉ちゃんと向かい合って目と目が合う。
吸い込まれそう。この時間は永遠だと錯覚する。

【コンコン】

ドアがノックされる。誰か来た。
解除される夢現な思考。

「入りなさい」

お姉ちゃんの言葉の後、数秒。
「失礼します」という言葉が聞こえ、目の前に差し出された紅茶。
少し視線を上げれば見知った顔。




「咲夜、今日も美味しいわ」

お姉ちゃんは優雅に紅茶を飲んでいる。
メイド長、咲夜は優しく微笑んで言った。

「ありがとうございます。
 お嬢様、パチュリー様がお呼びになっています」

「そう、聞きたいのね色々と。
 魔女というのは気を利かせてくれないのかしらね」

お姉ちゃんは私の方を見て、私の手を優しく掴んで言った。

「フラン、一緒に行きましょう」

「うん!」

私達は、繰り返す。色々な事を。
私達は、矛盾する。様々な事で。

けれど、私は生きていく。
お姉ちゃんが紡いだ詩。
私に刻まれて、血となり肉となる。

闇色を纏った螺旋階段を上がり、
扉を開けた先に見たのは、四季折々、豪華絢爛な色を纏った
メイド長自慢の庭園だった。

私は、それを見て微笑んだ。


〜終わり〜

テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

【東方SS】誰も知らない詩2

「独りぼっちはもうヤダよ…」

部屋の中、ベッドの上で膝を抱えて時間を持て余していた私。
物音一つしない空間。
まるで世界から切り取られたようで、
寂しいという感情が時間をかけて心の表面上に蓄積されていく。
心の奥から寂しさが止め処なく溢れ出す。


「眠っているのかしら?」

不意に頭上からする声。愛しい声。
私はバッと身を起こして声の方を見た。

「…誰も…いない?」

声は小さく部屋の中で反響して、それと反比例して先の感情は強くなる。
それは自分を保てないレベルまで達しそうなくらいで。

「此処にいるわ」

ふわり、背中越しに伝わる温もり。
大好きな甘い匂いがして、それだけで
先程の感情が嘘のように消えていく。

「お姉ちゃん、お帰りなさい!」

そして、振り向く。




時間を遡る…

「取り敢えず此処から出なくちゃ」

私はそう決心して、扉の前に立つ。
少し前までは色んな感情に翻弄されて、
自分を見失いそうだったけど、今はそんな事をしている暇はない。

「空間を、時間を強く感じる…」

先程の声がそう言っていた。
一歩踏み出す。時間が進む。空間を進む。
それを意識し始める。
時が空間が止まった部屋で。
そして、再度扉に触れた。

【カチリ】

鍵の開く音がした。ドアノブに手を掛け、私は扉の向こう側へ。
数歩先に上へと向かう螺旋階段が続いている。
一歩、一歩ゆっくりと上がる度に、血の匂いが鼻腔をくすぐる。
少しお腹がすいてきた。
時間の感覚が狂っている。

上がりきった。目の前に紅い扉。
思い切って開いてみる。
少し錆び付いていたのか【ギギギ…】という音が辺りに響き渡った。

「なにこれ…」

そうして目の前に移り込んできた奇っ怪な光景。

以前は美しかった庭園。
あのメイド長が手塩をかけて創り上げた庭園。
それが、無い。否、枯れ果て、寂れ、風化している。
そして、左右を確認してみる。
廊下に敷かれた紅い絨毯、等間隔に並べられた調度品達。
全てが壁に打ち付けられて本来の形を失っている。

「なに…これ、誰か、誰かいないの!」

私の声だけが静寂の中、反響していく。
私は歩いた。廃墟と化したこの館を。
何時もはお姉ちゃんと一緒でないと出歩けない館の中を。
何となく罪悪感を感じながら部屋を見て回る。そして立ち止まった。

「壁に打ち付けられた…妖精」

前から左に視線を移す。
白い壁に描かれたアート。
死を告げている。時間が止まってしまった。
赤と黒のコントラスト。そしてその他の色。

注意して見ると、その先にも同じようなものが
沢山、沢山、あった。

「一体、何があったの?」

解らない。解らないことだらけ。
お腹がすいていたけど、妖精は美味しくなさそうだから要らない。

そしてお姉ちゃんの部屋の前に辿り着く。
【コンコン】ノックの返事はない。
考えたくない事が浮かび上がって分岐していく。
どれだけ根付いても答えは一つだというのに無駄な養分を搾取しようとする思考。
それを振り払うかのように思いっきり扉を開いた。

「お姉ちゃん!」

滅茶苦茶になった部屋の真ん中に一人の少女が立っていた。
それは私が探していた人。私は嬉しくて抱きつこうと手を伸ばした。
スーっとすり抜けていく。どうして?

「あれ?どうして?」

自分の手を見る。そして振り向く。誰もいない。

「幻…なの?」

力無く座り込む。誰もいないと実感する。絶望する。
止め処なく涙。名前を呼びながら泣いた。
幾許かの時間が過ぎたのか解らない。
私は色んな場所を歩いた。いっぱい歩いた。
七色の羽で飛び立てばよかったのだけど、なんだか歩きたかった。
何時も降っている雨も今は止んでいた。
空に太陽と月が何度か入れ替わった時に、私は自分の部屋に戻って眠ることにした。
少し疲れた。
何をしているのか解らなくなってきた。

そして、少しだけ眠る事にした。

テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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Author:海兎
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